自転車活用推進研究会


自転車活用推進議員連盟

自転車活用推進議員連盟・PT大討論会 議事抄録


2013年10月28日16時〜17時15分、衆議院第一議員会館 大会議室(総席数300が満席/立ち見10人程度)

【写真】あいさつに立つ谷垣禎一会長。左から務台俊介PT座長代理、金子恭之事務局次長、岩城光英事務局長、谷垣会長、小泉昭男PT座長=写真提供・自転車活用推進研究会会員・井坂洋士さん(@持続可能な地域交通を考える会/SLTc)

出席議員(敬称略/順不同)

谷垣禎一、原田義昭、岩城光英、金子恭之、小泉昭男、穴見陽一、岩屋 毅、上野ひろし、大岡敏孝、大西英男、小島敏文、左藤 章、島田佳和、高木美智代、田嶋 要、西岡 新、平口 洋、務台俊介

代理出席(敬称略/順不同)

村岡敏英、三ッ林裕巳、土屋正忠、大見 正、鴨下一郎、福山哲郎、工藤彰三、船田 元、斎藤洋明、亀岡偉民、上野通子、堀井 学、三宅伸吾、井出庸生、渡海紀三朗、田中和徳、山田賢司、杉本かずみ、鶴保庸介、小林史明、塩崎恭久、二階俊博、行田邦子、秋元 司

有識者(順不同)

徳島大学大学院・山中英生教授★、三井住友トラスト基礎研究所・古倉宗治研究理事★、サイクルライフナビゲーター・絹代さん★(育児中のお母さん)、NPO自転車活用推進研究会・小林成基理事長★、日本サイクリング協会・吉田章理事(元筑波大学教授、全日本交通安全協会自転車安全教育推進委員会委員長などを歴任)、自転車駐車場工業会・片岡大造代表理事、都市交通評論家・亘理章さん(元トヨタ自動車ITS〈高度道路交通システム〉担当部長)、自転車活用推進研究会・疋田智理事(自転車ツーキニスト)、ハンドバイク利用者・和知徹さん

最初の4人(★)は「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」のための提言委員会(警察庁と国土交通省が共同設置)の委員

●司会・小泉昭男プロジェクトチーム座長(参議院議員)=神奈川県

谷垣会長の指示で議員連盟としての提言をまとめるプロジェクトチーム (PT) をつくって議論してきた。叩き台ができたので、広く意見を求めて成案を得るためこの討論会を呼び掛けた。一番大きな部屋を用意したが、会場が満杯となり、お座りいただけないほどで申し訳ない。たくさんの参加に深くお礼を申し上げる。

●谷垣禎一会長(法務大臣)=衆議院京都5区

自転車をめぐって大いに討論しようとご案内したら、こんなにたくさん集まっていただきびっくりした。これだけ多くの方々が自転車を愛好し、あるいは自転車を実用のために使おうと盛り上がっている時代は、私いま70(歳)ちょっと前で、60年以上自転車に乗っているが今まで経験がない。この議員連盟の中に、小泉昭男参議院議員をチーフとしてプロジェクトチームをつくり、新しい自転車文化をしっかりさせていくためには何をしたらいいかと議論した。きょうはそれを基に大いに議論をして、日本の中に健全でよりよい自転車文化を定着させ少しでも前に進めたい。熱い議論が伺えるのを楽しみにしている。

●原田義昭副会長(衆議院議員)=福岡5区

自転車活用を前へ(進めて)しっかりした新しい時代をつくりだそうということでよろしくお願いしたい。だいぶ昔に自転車こそが「健康」「環境」「経済性」何よりも「気持ちがいい」4Kだと言って「自転車が地球を救う」という運動(走行会など)を議員連盟でやったことがある。自転車を通じて4Kの思想、自転車こそが地球を救う、こういう観点で谷垣会長をしっかり支えて頑張りたい。

●岩城光英事務局長(参議院議員)=福島県

議員連盟の事務局を隣の金子恭之衆議院議員と2人で預かり、会の運営を担当している。23年前いわき市長になり自転車に関心を持った。2年7カ月前の東日本大震災を受け、例えば災害に遭ったときに自転車を活用していく、自転車をもっと生かしたまちづくりをするために、ご提言を頂きながら、議員連盟としてしっかりと取り組んでまいりたい。

●小泉座長

大討論会に時間を割きたいので、大変失礼だが議員の方々のご紹介は割愛させていただく。有識者、地域でご活躍いただいている方々に大変お忙しい中おいでいただいた。私たちが知らない、あるいは気付かないところについてアドバイスを頂ければ幸いだ。中央官庁・地方自治体からもご出席いただいたが、今回は政府側答弁の時間はない。ご理解いただきたい。

●穴見陽一PT事務局長(衆議院議員)=大分1区

提言の最終案について読み上げをさせていただく。

【提言案〈叩き台〉PDF】(この大討論会での指摘を受け修正される。成案はPT・議員連盟の決定を受け年内を目標にまとまる予定)

●小泉座長

議員の方々いろいろお考えをお持ちだと思う。自由討議でご発言いただきたい。

●小島敏文衆議院議員=広島6区

叩き台を拝見して全く賛成だ。同時に今ナショナル・サイクリングロード、コースの選定をずっと追求している。海外から多くの方々が日本に来てサイクリングしている。今後海外から人を集める中で、観光に自転車を活用してはどうか。全国でいくつかサイクリングロードを指定していただきたく運動していこうと思い、議員連盟の支援を受け共にやっていきたい。

●小泉座長

おっしゃる通り、観光関係にも大変重要な足になる。

●島田佳和衆議院議員=三重2区

ケイリンなどはオリンピック競技として定着しているが、BMXも新しくオリンピック競技になった。細分化した自転車競技のうち、今後オリンピック競技になっていく可能性もあるものがなかなか報われず、人材育成や競技人口(の増加)に手がつけられていないと聞く。幅広い自転車競技のサポートを国・行政にお願いしたい。私の選挙区にある鈴鹿サーキットでは「ママチャリ耐久レース」を行っている。自転車人口の裾野を広げるという意味でも、ぜひそういったところにも目を向けてほしい。

●西岡新衆議院議員=愛媛2区

地元は今治市を中心とした地域で、対岸の広島県との間に本州四国連絡橋・しまなみ海道という橋が架かる。10月20日に初めて高速道路(西瀬戸自動車道)の本線を開放したサイクリング大会(「サイクリングしまなみ2013」)を行い、議員連盟会長の谷垣法務大臣も来られた。海外からも好評で、観光で自転車を活用する取り組みは重要だと思う。さいたまでも、ツール・ド・フランスの名を冠した大会(さいたまクリテリウム by ツール・ド・フランス)があった。国土交通省のビジット・ジャパン・キャンペーン(訪日旅行促進事業)で(年間)1000万人の訪日外国人を集めていこうという目標がある。サイクリストが多い欧州などをターゲットとした観光も今後の活動の中に入れていきたい。

●平口洋衆議院議員=広島2区

よくまとめられていると思う。やはり自転車を活用する人のマナーをきちっとすることが普及する上で大事だ。自動車交通や歩行者とバッティングする面があるので、似たようなところが(提言案に)あるとは思うが、マナーの向上について国民的に取り組むということも入れていただければ幸いだ。

●小泉座長

自転車を取り巻く環境もだいぶ注目されつつあり、マナーの部分も含めて議論していきたい。

●大西英男衆議院議員=東京16区

国会に初当選して、自転車で選挙区の東京・江戸川区から国会に来たので、笑われたり注目されたりした。実際東京ではクルマよりも自転車の方が目的地に着くのは早い。安全で時間も正確だ。江戸川区は各主要駅に2000〜3000台規模の駐輪場を設置していて、他の自治体と比べ先進的ではないかと思う。提言案叩き台の中に、東京オリンピックに際し各会場を自転車で結べるように道路整備や環境整備をしていくべきだとある。23区の区長会等に提言をして、都市交通の要として自転車が活用されている姿を世界の方々に見ていただけるよう努力していきたい。

●小泉座長

東京オリンピックは7年後だが、だいたいの流れが決まるのが来年(2014年)2月と聞いている。時間がないので、それを踏まえてご発言願いたい。

●大岡敏孝衆議院議員=滋賀1区

私の選挙区は琵琶湖があり、環境を整備すれば自転車王国になるのではないかと思う。競輪場(大津びわこ競輪場)が廃止になり、残っているバンクを利活用できないかと考えている。今回の提言案の中に(1)の12)として入っているが、自転車産業には十分成長戦略があり得、新分野を切り開けるのではないか。例えばお母さんたちの子供乗せ自転車は二輪だと非常に危ない。格好悪いと誰も乗りたくないが、三輪・四輪で軽くて格好いいものが作れれば、転倒せず親子とも安全で、障碍者(しょうがいしゃ)も乗れて、高齢になっても転倒のリスクがなくなる。電動アシストの四輪なら重い物も積みやすい。こういった物を電車やバスで運べれば、旅行の仕方が変わる。これまで日本は新分野を開拓し産業にしていくことが苦手で、輸入してばかりだった。これからは欧米にも出していけると思う。期待や夢も込めて応援していきたい。

●務台俊介PT座長代理(衆議院議員)=長野2区

私の地元はアルプスの麓で、日照時間があり、風光明媚(めいび)なところもあって全国のサイクリストの方が移り住んでくる。話すと道路を自転車で走行しやすくしてほしいという希望が相当強いが、一方で公共交通と自転車の連携をよくしてほしいとの希望がある。東京からサイクルトレインのような形で「あずさ」に自転車を積めるようにしていきたいので、(1)の8)は本当にありがたい。もう一つ、自転車通勤に手当がなかなか出ない。導入しているところがあるが、自転車通勤を称揚するために「ジテツウ手当」を本格化・制度化することも考えられるのではないか。

●小泉座長

いいご提案だ。

●田嶋要幹事(衆議院議員)=千葉1区

たぶん民主党(の大討論会出席議員)は私ひとりではないかと思う。千葉は高い山がないといわれ、自動車産業製造業があまりなく、観光や未来はどうかなと思っていた。房総半島はあまり高低差がなく、海岸線が非常に長いので、ランニングのトレーニングに選ぶ方も大勢いる。自転車にいいのではないかと考えた。地元千葉のためにも、日本全体のエコのためにも、自転車は大変大きな魅力がある。日本にとって大きな可能性があり、イメージにぴったりのこれからの分野だと思う。台湾には台湾一周のサイクリングコースがあったり、有名な企業もあったりする。ドイツやオランダなどを含めた先進的な例に学びながら応援していきたい。

●岩城事務局長

皆さま方おいでいただいているので、なるべくご意見を頂きたい。この提言では自転車レーンについては言及があるが、自転車道の整備も大事な課題だと思う。どんな点に配慮・注意したらよいか、山中先生にお教えいただきたい。

●山中英生教授

「ガイドライン」では、自動車の制限速度が高い時速60キロ以上の所では自転車道になる。日本の自転車道で一番問題なのは、同じ空間を両方向(通行)で使うのを認めていることで、ほとんど両方向で作ってしまう。これは海外では非常に危ないタイプだとよく知られている。交差点の処理が非常に難しい。両方向から自転車が20キロというスピードでやって来て、交差するクルマには見えなくなる。事故の(原因になる)一番の大問題だと思う。提言の中で、自転車道も一方通行で造っていけるようにすれば生きるのではないかと思う。

●小泉座長

今度は会場の方からご意見を頂きたい。

●会場・斉藤やすひろ東京都議会議員

目黒区選出で都議会公明党に所属している。地方議員だが一言お話しする。ご提言の中に「国及び地方自治体は」という主語のところが数多く見られる。道には国道も都道府県道も市区町村道もありつながっているので、国と地方の連携という視点を加えてほしい。地方の視点が加われば、地方議員も国会と軌を合わせて推進できる。

●会場・小林正樹さん

この提言は実に素晴らしいと思い100パーセント賛成だが、質問させてほしい。提言の提出先は政府だと思うが、政府が受け入れて実際に政策となっていくかどうかをどうチェックしていくのか、どういうプロセスを踏んで進んでいくのかが知りたい。千葉・埼玉が最近進んできたが、東京が非常に遅れている。オリンピックも控えた東京をどうするかが非常に重要だ。東京都に対してどう働き掛けていくのか、アイデアがあればお聞きしたい。

●小泉座長

これは政府に提言する。特命担当大臣もお願いし、サイクリストを選んでほしいと入っている。

●会場・高橋大一郎さん

自動車学校の指導員をしている。日本一周自転車で旅をした。自転車教育について『自転車ルール教本』という教科書的なものを作ったので、こういうものを活用していけたらいいと考えている。

●自転車活用推進研究会・疋田智理事

「自転車ツーキニスト」を勝手に名乗っている。今の日本が2020年のオリンピックを前にして学ばないといけないのは、ロンドンの「ボリス革命」だと思う。2005年にロンドンオリンピック開催が決まり、2012年までの7年間で偉大なる自転車都市に変化した。これを主導したのは、ロンドンのボリス・ジョンソン市長と、市長が一元化して政策を任せた(ロンドン交通局交通アドバイザーだった)クルビア・レンジャー (Kulveer Ranger) さんで、こういう政策一元化が必要だ。ロンドン市を英国政府が後押しした。東京都では自転車に関わるセクションが6部局14課にわたる。東京でも、都が主導して国が後押しする、その政策を一元化するシステムをなんとかつくっていただけないか。

提言案(1)の4)に「車道における自転車走行場所」と議員連盟としてはちゃんと書いているが、都に聞くと相変わらず歩道が基本だ。例えば都道316号海岸通りのように、自転車がいきなり車道通行禁止になってしまう通りがある。路肩がすごく空いていてタクシーの居眠り場所になっている。自転車は歩道で車椅子とかベビーカーとかとごちゃごちゃになってしまう。5)のパーキングチケット見直しは、警察庁通達にもある。青山霊園のすぐ横の都道319号ではパーキングチケットどころか駐車レーンが最近できた。ここも居眠りタクシーの駐車場だ。駐輪場の整備は立派なことだが、都に聞くと都営駐輪場は1カ所もなく、今後造る予定も一切ないという。国の政策と都の政策の齟齬(そご)、これをなんとかしていくシステムがないと、何でもかんでも絵に描いた餅で終わる気がする。この辺りを議員連盟はどう考えていらっしゃるかお聞きしたい。

●小泉座長

疋田さんのご発言は説得力があり、確かにおっしゃる通りだ。パーキングメーター、チケットは路上駐車を自由にさせているのと同じで、1車線つぶしているので大きな問題だと思う。東京都の場合、おっしゃる通り、歩道の上に「自転車道」をつくってしまう。もう誰が考えても事故の誘発以外何もない。考え方として自転車レーンをしっかり全国に普及させ、各自治体にも徹底してこの方向で足並みをそろえていくと盛り込んだ。場所によっては社会実験ばかりで細切れという現実なので、早く改めてもらえるよう提言の中に盛り込んでいく。専門的な部分については谷垣会長・大臣を先頭にブラッシュアップしていく。

●大西議員

私は都議会にも長くいた。東京について厳しいご指摘を頂いた。都内には23区あり、幹線道路の京葉道路は、江東区では自転車道を造ったが、墨田区に行くとそれは消えてしまい、歩道を走らざるを得ない。今のご提言はしっかりと東京都の方に伝えさせていただく。各自治体が条例で決めると23区てんでんばらばらになってしまうので、国が法律として促進を明確に打ち出せば自治体としてもそれに沿って自転車行政をできると思う。(都の自転車関係)6部局14課についても調べ、厳しいご意見が出たと伝えたい。

●高木美智代幹事(衆議院議員)=比例東京ブロック

公明党で自転車等の利用環境整備推進プロジェクトチームをつくり、座長を務めている。一昨年(2011年)12月、緊急提言(自転車走行環境の整備についての緊急提言)をとりまとめて、政府に出した。それに基づいて東京都もすでに条例を作り、京都や名古屋でも進んでいると聞いている。全国でという話があったが、地域でどうするか。長野のわが党の議員から「自転車レーンは都市の問題だ。長野でつくると危ない」という話があった。地方の考えも含めて一緒に推進していくことが大事なのではないか。自転車レーンの整備できる所はいくらでもある。まとめられている提言案には私も一つ一つ大賛成だ。超党派でしっかりと政府に対して要望しながら進めていき、ここから全て始まる。大変心強い思いだ。

先日、内閣委員会のマイナンバー(共通番号制度)関係の視察でスウェーデン、デンマーク、エストニア、ドイツに行き、一生懸命自転車の走行環境の写真を撮ってきた。クルマが走行する横にそのまま自転車のレーンがあって、そしてそのさらに歩道に近い側にクルマの駐車スペースがあるなど工夫されている。日本も思い切って諸外国の例に学ばなければいけない。今こそ変えなければいけない。そのためにしっかりと力を尽くしてまいりたい。

●ハンドバイク利用者・和知徹さん

まず提言案の中にタンデムについて文言があるが、パラリンピック競技種目として使われている自転車の種類として、他に三輪の自転車トライシクル、手でこぐハンドバイクというものがある。先ほど三輪・四輪の自転車を活用するお話があったが、実際私はドイツで作製され千葉にある代理店から販売されているハンドバイクを使っている。日本以外の国では三輪・四輪というのは多く使われている。レーンというものを考えるに当たって、ぜひ三輪を活用できる場面をよく考えて進めていただきたい。歩道内を三輪が走るのは過去危険視された。歩道の中は波打ち、凸凹がかなり多いことで危険が増す。私は普通に車道を走っているが、車道では転倒する危険性はほぼない。これはタイヤについて考えられた車道では、その部分についての危険が少ないということだ。私は車椅子で生活しているが、皆さんのお話を伺い、自転車についていろいろ考えていくと、結局はバリアフリーと同じような考え方になると感じる。私たち車椅子を使っている者と自転車を使われている方との差は、自転車はどうしても弱者でありながらも強者にもなってしまい、認識があやふやだとそのことをはっきり問題視できないところだと思う。正しく認識することで、バリアフリーというものについても皆さんの中で意識していただけるのではないか。私たちもハンドバイクということで、マウンテンバイクやロードバイクと同じように、皆さんと一緒に考えていければいいと思う。

●会場・廣田さん

新潟から来た。自転車都市のモデルを語る場合、ヨーロッパの都市が挙げられることが多いが、私は中国の北京をモデルにしてはどうかと思う。ヨーロッパの都市は東京に比べてはるかに規模が小さいが、北京は東京と同規模の都市だ。自転車が実質的に有効な交通機関として使える道路構造で非常に理想的だ。私は数年前に初めて北京に行き、非常に驚いてそれ以来、年に1回くらい北京へ自転車に乗るために行っている。遠くのヨーロッパを目指すのもいいが、もっと近くの北京をモデルの一つに加えてはどうか。

●会場・木下兼一さん(自転車活用推進研究会)

この提言に関して、内容はかなり賛同できる。疑問に思うのが、ヨーロッパの都市内の住宅地域などで行われる時速30キロ制限、テンポ30のようなものが全くないことで、速度制限に関しても環境整備に含まれるのかどうか。もう一つヨーロッパなどにある自転車の走る場所を示す自転車地図を作るお考えがあるかどうかお聞きしたい。

●サイクルライフナビゲーター・絹代さん

いま主に女性に対する自転車の普及などを行っている。子供の自転車教室と「子ども乗せ自転車『事故ゼロ』プロジェクト」のお手伝いをしている。その立場からお願いが3点ある。まず「教育制度」の中に子供に対する教育を盛り込んでいただけないかと思う。子供たちに自転車を教えると、短い時間でもしっかり走れるようになってルールを分かってくれる。いま子供たちにしっかりとそういったルールや正しい走り方を教えていれば、10年後20年後未来が変わってくる。もう一つ、子供乗せ自転車は非常に危ない乗り物で、しっかり走れば便利だが、前後に子供を乗せると不安定な乗り物になる。自転車の特性を分かっていると前後に子供を乗せるのはすごく抵抗がある。自転車が危険なものになり得る可能性や交通ルールをあまりよく分かっていない人が、サンダルのような感覚で子供乗せ自転車に乗っている。子供を乗せている以上、事故が起きたときには子供たちも巻き込まれてしまう。提言案の中に「高齢者」は出てくるが、子供を乗せているお母さん、子供を連れているお母さんたちに対するご配慮を頂けないかと思う。あともう1点(自転車レーンなどを)ドライバーから見えるように明示するということがある。この間、大阪・本町通(ほんまちどおり)の自転車レーンを見てきたが、警官の目の前をばんばん自転車が逆走している。自転車レーンに方向が指示されていても、逆走する人たちがいる。自転車レーンをつくっても、走り方が分かっていないといけない。安全に車道を走るためには、ドライバーの方もそういった走り方を認識していないといけない。クルマのドライバーに対して道路をシェアしようという方向の教育も、盛り込んでいただけないかと思う。

●三井住友トラスト基礎研究所・古倉宗治研究理事

国が前面に出て自転車政策をリードするということをどこかに明確に出してほしい。健康、高齢化社会、環境の問題にしても、一地方公共団体で解決できるものではなく、国全体で解決すべき問題だ。その切り札として自転車は一番優れている。アメリカのように連邦制で地方分権が強いところも含め、まず国家が前面に出て責任を持って自転車(政策)をリードする、それで公共団体を引っ張ってくる。国が自転車計画を策定するとか、あるいは全国のネットワーク計画を作るとか、ちょっと地方分権に逆行するかもしれないが、国レベルできちっとやるべきことをやって地方公共団体も付いてくるシステムをつくるべきだ。

●自転車駐車場工業会・片岡大造代表理事

(1)の2)「道路、及び交通に関する法律」には非常に齟齬があるので、道路法、道路交通法、道路構造令等をぜひ変えていただきたいと国会議員の先生方にお願いしたい。東京オリンピック・パラリンピックに関する(2)の1)について、ロンドンは7年間かけてボリスバイク、バークレイズ銀行がバックアップした公共自転車(バークレイズ・サイクルハイヤー)を作った。東京都でも区によって実施している。自転車駐車場にもレンタサイクルはある。1都6県首都圏で統一された格好で、互いに乗り入れできるようなものにするために、ぜひ国会の方から後押しをしていただきたい。駐輪場をもっと造らなければいけないが、シェアサイクルはその解決にもなる。(シェアサイクルに関連して)サイクルステーションを入れていただいた。これは都県にできることなので、ぜひ後押ししていただけたらと思う。

●谷垣会長

法務大臣の仕事もあるので、これで立たせていただく。私どもが十分気付いていなかった具体的なご意見も頂いて大変よかったと思う。国と自治体との関係は非常に重要だ。国が一歩前に出なければいけない面も多分にあるだろう。他方、自転車の利用、自転車を使った地域づくりというものに極めて前向きな知事さんもいる。理解のある知事さんと協力をして、先進的なモデル地区をつくっていくことも、手法としては必要ではないかと思っている。提言案の内容もまだ詰めなければならないことがたくさんある。何年かたった時に確実に動いてきたな、と皆さんに思っていただけるように、われわれも頑張りたい。

●日本サイクリング協会・吉田章理事

先の自転車に関する道路交通法改正、交通の方法に関する教則改正のお手伝いをした。駐輪場や自転車レーンの増設が社会的な喫緊の課題になっているかのようだが、ハードを整備すれば現実の問題がなくなるかというと、決してそうではない。ハードを使いこなすソフト、そこが合わせてバランスよく充実しなければ解決しない。例えば自転車レーンが加わると交差点に倍以上の危険性が発生する。予防するソフトを先んじて考えていく必要がある。行き着くところ交通リテラシーを高めるための教育が全般的に必要かと思う。やはり学校が交通安全教育に対して本式に向き合う必要がある。しかしその成果は遅れる。高齢者の安全を確保していくために急いで交通指導の機会を積極的につくっていくことが必要だ。教科化の動きのある道徳の中で、ぜひ交通リテラシーを盛り込んで、交通安全の社会をつくれるように国のレベルでお考えいただければありがたい。

●都市交通評論家・亘理章さん

一つ目にまず、東京都が世界の大都市の中で最低だという認識をお持ちかどうかが問われている。最低だ。パリ・北京・ソウル、それ以下だ。これを大前提としてどうしていくか考えていただきたい。古倉さんの話にあったが、ガイドラインでやっているのは日本だけで、それもつい最近できたばかりだ。ほとんど全ての国で国としての基準がある。全国共通で基準を運用しなくては安全を図れない。その認識がきちっとされていないと、いくら形だけ作っても都道府県ごとにばらばらに運用され、利用者はたまらない。

ちょっと外れるが、日本で利用者が軽視さているのは交通結節点だ。東京オリンピックの時に問われる。JRと私鉄とバスの仲が非常に悪く、池袋駅で降りてバスに乗るのに、どこの改札を出たらいいのかさっぱり分からない。新宿・渋谷・東京、みんな同じだ。ヨーロッパなどは、改札を出たらどこの出口にどこ行きの何番線のバスがあるか徹底して案内する。これが本当のおもてなしだ。日本はせいぜいJR・私鉄・地下鉄に対する案内だけで、利用者不在だ。

交通政策の世界の潮流は、市街地ではもう混合交通、すなわち一つの車道・車線を全ての交通が共用してお互いに譲り合って利用しようということになっている。その中で交通秩序を保つために交通の優先権を決めている。まず第一に歩行者、次に自転車、公共交通、それからクルマと、これがきちんと交通施策の中で運用できないと秩序が保てず危険な目に遭う。優先権に基づいて、議論されている自転車の車道における(通行)部分やバスに対してどの程度配分しよう(ということが決まる)。パリは完全にバスと自転車の共用レーンになり、当初3.2メートルだったレーン幅が、バスと自転車の間に1メートルの間隔をとりたいからと一昨年4.5メートルになった。その分だけクルマの分がなくなってクルマは一方通行を余儀なくされる。このような運用を当然考えていかなくてはいけない。とにかく人も自転車もクルマもみんながお互いに譲り合って交通できるように、それがお互いが目に見えて分かるような設計をぜひしていただきたい。

●会場・瀬戸圭祐理事(自転車活用推進研究会)

この提言の中にある「自転車担当相」に非常に賛成。(現状)強いリーダーシップが足りない。国が音頭を取ってしっかりやっていく。いろんな関係先がいろんなことを言っていたらなかなか進まない。やはり初代自転車担当相は谷垣さんかなと期待している。強いリーダーシップをもって引っ張っていっていただきたい。

●小泉座長

大きな一歩を踏み出したような感じがした。あと2人で終わらせていただく。

●会場・中島さん

きょうの提言案全てに賛同させていただきたい。一つだけご質問したい。(2)の2)の「盗難やいたずらの起きにくい駐輪場」というところで、全体に駐輪場に関する言及があまり明確になっていないのが気になる。駐輪場の確保の計画が具体的にあるようならお教えいただきたい。

●会場・佐藤さん

愛知県小牧市から来た。(1)の7)になってやっと「過度な自動車依存・優遇施策を抜本的に見直すこと」が出てくるのは位置づけとして低いのではないか。もっと上位に挙げてもいい。前文の中に入れることまで考えてもらえればうれしい。

●上野ひろし幹事(衆議院議員)=比例北関東ブロック

PTで議論してきた内容について、たくさんのご意見を頂いた。それを踏まえてよりよいものにしていきたい。リーダーシップというお話があった。いいものをつくっても、大事なことはしっかり実現することだ。長年サイクリストとして自転車に乗り、政治家になる前は経済産業省車両課で自転車行政を担当した。自転車の乗りやすい環境をつくろうと思ってもなかなかできなかった。そういう思いもありこのPTに関わっている。しっかり実現に向けて頑張って先生方としっかりやっていきたい。

●岩城事務局長

会場からもアドバイザーの先生方からも貴重なご提言を頂いた。しっかりと受け止め提言案に付け加えて、よいものにまとめていきたい。政府に提出して、なんとしても実現していくように頑張っていく。またこういった機会をつくるかもしれないのでよろしくお願いしたい。

私は日本トライアスロン連合の会長を務めており、自分もトライアスリートとして自転車に挑戦している。2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックでトライアスロンが正式種目になる。障碍のある方もトライアスロンに挑戦されている。不自由なお体で海を泳ぎ、競技として自転車に乗る。見ていて本当に感銘を受ける。日本人選手にメダルを取ってほしい。障碍のある方々の自転車練習環境は本当に不自由なもので整備に努力していく。皆さま方もぜひご理解いただきたい。

●小泉座長

ご多忙の中多くの皆さんにお集まりいただき感謝申し上げる。議員の先生方は熱いものを胸に感じたと思う。これから私どもはできる限り自転車で通勤する。私は今、自転車で通勤しているが、国会議員の自転車ツーキニストを増やし、ご期待に沿うように頑張る。

文責・NPO自転車活用推進研究会 2013年11月5日